集団と距離感/人は、なぜ他人を許せないのか?を訪ねる3
集まり、離れる
今回の読書では、『集団で寄り添うこと、集団で敵対すること』について考えさせられました。
国籍、地域、性別、年齢、趣味、職業、家庭、会社。
誰でも、色んなかたちで、様々な集団に入ります。
集団でいることで団結力を発揮したり、自分を肯定できるというメリットがあると思います。
肯定できる反面、他の集団を否定してしまう可能性がある。
自分の属する国と不仲の国や地域の人への偏見。
性別での差別。
ジェネレーションギャップ。
趣味によっての性格の決めつけと軽蔑。
各職業や家庭、会社での優劣。
寄り添ってできる集団と、対になる集団を否定すること。そこに矛盾を感じました。
1人でいる危険を避けるため、大きな力を発揮するため、集団として寄り添うのに、他の集団とは敵対する。
集団と集団が手を組んだ方が、より大きな力を出せるはずなのに、手を組むことなく敵対するという矛盾。
そこには、危機が迫ったとき、1つの集団であることで全滅することを防ぐためという理由があるのかなと感じました。
本書では、「近い距離であるが故に許せなくなることもある」とあります。
もしも、許せない原因や理解できない理由が、「1つになることで、全体が大きな危機的状況に見舞われないため」だとしたら、違う集団を否定し、間違っていると判断するように本質的に仕組まれているのかもしれません。
著者は、「人間の脳は、誰かと対立することが自然であり、対立するようにできている」と言います。
近い距離で、別々の集団が反発しあう仕組みが自然なら、適度な距離を取ることで許すことができるのかもしれないと思いました。
近いからこそ、許せないものがある。
もしも、「許せない」が、本質的に、環境的に仕組まれたものだとしたら。
距離を置くことで、許せなくとも共存する道が見えてくるかもしれない。
本を巡る旅におつきあいいただき、ありがとうございました。
今回も前回に引き続き、「正義」、「許せない」をテーマにした本です。
人は、なぜ他人を許せないのか?
中野 信子(なかの のぶこ)【著】
価格:1,320円 |